チャプター 16

末期になると女王の権力は減少していき、傍流の地の統治は、騎士らに現実の一貫性を試すという狂喜の任務を与える学者らによって行われるようになった。彼らは『全ての師』ケルダー・ウォージェを中核としたジェンシム書記官であったが、同時にエアボート群の轟音を響かせながら広大な塩類平原を渡っていく放浪の語り部たちの直系でもあった。彼らはこの世界をこのように讃えていた。

甘き水を備え、その内に毒は無く。天候の機嫌も安定なり。浅い草原には巨大な足広な猫が潜み、ブリリアントブルーのフラミンゴが平原に列をなす。空気は分厚く暖かく飛行に適し、森の風味を運ぶ。塩類平原での夜明けほど見事な夜明けはなく、クリセイアドでの夕陽ほど女の目に涙を浮かべさせる夕陽はない。コルセアは外海を走り、自分達よりも貨物船を待ち伏せ、追跡劇の質に見合うだけの噂と支援を獲物に与える。若き男や女がコルセア船に飛び乗って冒険に出かける物語の素晴らしきこと!同じく素晴らしきはあまりに荘厳でそれを覆う放射性物質の分厚さ故に年々地殻へと消えていくアンダラヤ山脈、そこに鎮座するテラス付きの農園。そして何よりも素晴らしきは石油化合物の無い世界において我らを動力の世界へと押し上げた分裂師らなり。彼らの記憶を無数の怪談と仕立て上げた我らを赦したまえ。特に融解した鉛反応路と制御棒に串刺しにされた12名、そして彷徨うコアという壮絶な物語を赦したまえ。

上位なる力の無条件な慈悲によりこの世界より我々に与えられしは赤き真実、我らが二度と恐怖を知らぬように。

だが学者たちは、891名の中で唯一、創世を外より見たというマラとユルドレンに対する苛立ちも記録していた。この2人は各地を放浪し、兆しや預言の話を集めながら、かつての時代より生き残り続けたエカレイスト派は、アウォークンが借りを返さねばならない審判の日の存在を囁き続けた。

宮廷には1人の学者がいた。彼女は驚くべき背の高さと強烈な憤怒を備え、さらに己の全体重と身体を使ってのみ弦を張ることのできる強弓を携えていた。「私はスジュール・エイド」と女は言った。「私ははるか昔に行われた我が主ディアシルムの殺害に罪に、マラを問う。我が持ち物にはたったの死をもたらす武器がある。私をマラの下へ連れていけ、さすればその死を届けよう」

学者らは互いに相談し1つ合い、この悪しき殺人を許せば、あるいは新たな神義戦争の勃発を防げるかもしれないと語り合った。そうして彼らはスジュール・エイドにマラを狩るためのあらゆる知識を授けたのであった。