チャプター 5

「正体不明の機動物体へ、こちらエクソダス・グリーン。そちらのトランスポンダーより発信を行ない、識別情報を送れ。以上」

さらに15分間の飛行時間が沈黙とともに過ぎていく。12.5光分先でわずかな反応を見せた物体からの返答はない。この亡霊はすでにヤン・リーウェイを18時間追跡し続けているだけでなく、出現する度にその距離を詰めており、当然船長アリス・リーは警戒していた。かつて他の移民計画は、外宇宙への加速中にその姿を消した。それが事故によるものか敵勢力の仕業かは不明であったが、アムリタ計画ではそれら消失の事例を盛り込み、考えなしに虚空へと飛び込まず、ハリネズミのごとく武装するようになっていた。

「相手を突っついてみまよう」と彼女は決断した。「主機関、動力カット」

船の搭載AIが命令に従うが、別の乗員がその命令を復唱した。「MECO、了解」

「散開アンテナ射出。完全な融合スナップの記録のため、捕捉レーダーの準備を開始。向こうの姿を撮って、何が見えるか確認して」

「船長」と通信担当官。「何やら…奇妙なものを受信しています」

「亡霊からのご挨拶?」

「いえ、ソルスセントからの指向性ニュートリノビーム通信です。『カルラエ・ホワイト』級の緊急事態が発令。太陽系全域が…ウォーマインドの制御下に入りました」通信担当は仮想的なイタズラの類と思ったのか、センサー感覚を無視して直接操作を始めていた。「我々は…徴兵されました」

アリスの頭の中で、これらの事実が子供の手で石をぶつけ合うかのように押し合わされていた。その論理はあまりにもバカバカしくて途方もなく、筋道立てて組み合わせることは不可能であった。「何ですって?」

「我々は支援軍船に任命されました。それと」通信担当が息を呑んだ。「脱出進路を取り消し、太陽の周回軌道に侵入するよう命じられてます。エンジンが自壊するまで過剰推進せよとの明確な指示も含まれており、我々の物理弾兵装を…長距離砲として使えるよう、ラスプーチンより目標座標の情報が転送されるとのこと。なお、我々は『危機的状況の終息後に回収される』とあります」

「詳細を! 危機的状況って何?」

「状況は『スカイショック』です。ええと、つまり外宇宙から敵性存在が到来しています」

リー船長は無理矢理に指揮官としての仮面をかぶった。「先方に状況説明の要請を送って」

「アンテナ射出は取りやめますか?」

「いいえ。数を増やして、さらに望遠鏡も投入。星系全体を走査して。故郷で何が起きているのか調べたい」アリス・リーはとあるファイルを呼び出そうと手を伸ばし、一瞬躊躇した。そしてアムリタ計画の憲章を選び出した。「判断を下す必要がある」