チャプター 5

6月3日/9:34PM

信じられないことに、我々はイーブンタイドに戻ってきた。廃墟と化している。その姿を見るのは辛い。とにかくエウロパから離れなければならない。どうやら、ブレイ博士はエウロパそのものを吹き飛ばすつもりのようだ。

「11時の方向に避難船が見える」と名もなきエクソが言った。報告に感謝する。

「全員。止まれ!」とブレイ博士は言うと、避難船の周りにいるベックスを指さした。

「慎重に対処する必要がある」と彼女が言った。「全員――」

「エリザベス」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。なんてことだ。あのAIだ。彼は我々全員の通信機器を乗っ取っていた。全員に彼の声が聞こえていた。「その船に足を踏み入れるな」

「いい加減にして、お祖父さん」と彼女が怒りを込めて言った。

「それとそこのお前、私の新しい友よ。お前はどうする?」とAIが言った。彼は名もなきエクソに話している。彼は一体何を企んでいるんだ?

ブレイ博士がその名もなきエクソを見た。彼女は首を振り、何も言うなと合図を送った。だが彼は苛立っていた。彼はここに来てから、彼女に対してずっと怒りを感じていたようだ。

「私が誰なのか教えてくれ、そうすれば私はここに残る」とエクソが言った。本気か? これは家族ドラマか?

ブレイ博士が激怒した。「今はそんなことを言ってる場合じゃない!」

「我が友よ、いまだに答えにたどり着けていないとは驚いた」とAIが言った。

「私はクロビス・ブレイ。お前と同じだ」とそのエクソが言った。

「そのとおりだ。クロビス1」AIは、まるではしゃぐよう言った。

「ただ自分の人生に関する記憶がまるでない」

「そう作られたのだ。最も基本的な感情しか持たないように改造されている、他のエクソと同じようにな。だがお前がそこにいる友人たちを逃がさないように協力してくれるなら、お前の人生のことを全て話してやろう」

一瞬、間が空いた。ブレイ博士はクロビス1に向かって首を振った。「お願い」と彼女は言った。「これ以上クロビスは必要ない」私は彼女が切実に訴えかける姿を前にも見たことがあった。だが今回はそれとは比べものにならない。これはまるで… 懇願だ。

クロビス1とブレイ博士は顔を見合わせた。

「消えてくれ、ご老体」とクロビス1は通信機に向かって言った。ブレイ博士は心から喜んだ。我々全員がそうだ。ふう。

「つまり、まだ自分の神を受け入れられないということか。いいだろう」とAIが言った。

一体どういう意味――

*大きな爆発*

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