チャプター 9

あなたはタワーの中庭に立っている。武器や装備はなく、感覚は普段よりも研ぎ澄まされている。舌の裏に塩の味を感じる。

「最後の都市」に行くならNへ、タワーのさらに奥に行くならOへ。

N. 街は消えていた。今そこにあるのは、レンズと「歪み」、そして曲がった光に覆われたブラックホールの特異点だ。まるで火膨れのように見えるそれは、何かがあったことを物語っている。それがこちらを見つめ返しているような、薄気味悪さをあなたは感じている。Oへ。

O. あなたはバンシー-44、カディ55-30、マスター・ラフール、テス・エベリス、ベネディクト99-40、スラヤ・ホーソーン、遂行者ヒデオ、アマンダ・ホリデイ、アラーハ・ジャラール、ケイド-6がいつもの場所にいるのを見つけた。ケイドは抑うつ的な様子だ。かつての「預言者の間」から見慣れない光が発せられている。しわがれた声が「ハンガーでサッカーをしよう」とあなたに呼びかけている。ケイドと話すならCへ、「預言者の間」を調べるならPへ、サッカーをするならEへ。

P. かつて預言者の機械があった場所で、ベックス・ハイドラが宙を舞っている。近づくと、塩水がその胴体から噴き出し、髪が蛇になったギリシャ人の女が床へ転がり落ちた。彼女はうめき声を上げて自分の頭を鷲掴みにした。苦しみに満ちたその髪がうねっている。ベックスを攻撃するならSへ、メデューサを助けるならQへ。

Q. 「ここを出なくては」とメデューサはささやく。「ドゥイ・インカル自身も、彼女があなたに語った全てのことも、幻想に過ぎない。キュリアに私のシステムは汚染された。そして今キュリアは、己の目的を果たすために、あなたを雇おうとしている。私をシミュレーションの境界線まで連れて行って。そうすれば私達は脱出できる」。メデューサをタワーの端まで連れて行くならTへ。ハイドラに説明を求めるならRへ。

R. ハイドラはあなた自身の声であなたに語りかける。「我は見事なまでにドゥイ・インカルを擬態した。通常ベックスは、因果律を超えた光と闇の影響を説明できないが、我はもはや単なるベックスではない。分析に基づく優美な解決策が存在しない場所では、我々は甚大なる計測能力を使って合理的な複製を生成する。これはセイント-14に対してとられた対策だ。

「何度も繰り返されるループでドゥイ・インカルを観察すれば、このシミュレーションが『夢見る都市』における彼女の目論見を明らかにするだろう。彼女は『夢見る都市』が夢見る世界、ディストリビュータリーの鍵を探しているのだ。アウォークンの生誕地であるその地では、時間は速く流れる。その世界を征服したら、彼女はそこを基地として、数十億年分の貢物をほんのわずかの時間で集めることができるようになる。そのような存在論的権威を与えられた実体は、現実を好きなように変えることができる。お前はそれを阻止せねばならない。彼女の永久性を打ち破る術をお前が見つけるまで、我は『夢見る都市』をループさせ続けるだろう」

立ち去るならQへ。ブラックホールの役割に関する情報を求めるならUへ。

S. あなたはベックス・ハイドラと戦う。戦いがこちらに有利に進むと、ベックス・ハイドラは静電気を吐き出し、あなたは胸が悪くなるような既視感に見舞われる。Nへ。

T. メデューサには体重がないが、髪の毛の蛇があなたの首にまとわりついてくる。「跳んで」と彼女はささやく。「ここで見たものは全て忘れなさい。あなたを混乱させるために作られたものだから。3週間後にまたあなたにメッセージを送るわ」。跳ぶならZへ。

U. 「ブラックホールは物理的宇宙で最も密度の濃い計算機だ。時の遥か彼方で消滅するまで内在する情報を保管できるという点で、ブラックホールは最も安全な場所とも言える。ハイヴはワールドグレイブのような小型の特異点計算機を操作する。そしてベックスは、時空の狭い地域にエネルギーと情報を大量に溜め込み、外に見えるクーゲルブリッツブラックホールの中で崩壊させる。しかし恒星質量または銀河質量レベルの本物のブラックホールのほうが、想像を絶するほど強力だ。

「オリックスが剣の論理を存在の拠り所にしたように、サヴァスンが秘密の隠匿をその存在の礎とするなら、彼女が自身の王国と最も深い秘密をブラックホールという超巨大計算機で守るのは至極論理的なことだ。彼女を倒すには、事象の地平線をくぐり、彼女が最も入念に守っている真実を暴き出さねばならない」…Rへ。

Z. あなたはタワーから飛び出し、キュリアのシミュレーションから脱出した。