人からは自信に溢れていると言われる。否定はしない。戦場で二の足を踏んだことなど1度もないのだから。

古い友人、アンダルは昔よくこの場所、この位置に立っていた。いつも突拍子もない話を聞かされた。アンダルがここにいたならこう言っただろう。「ケイド、証拠を調べてみたんだ。個人的にはお前じゃないかと思う。ラスプーチンの正体だ。伝説のウォーマインド、地球の守護者。お前がラスプーチンなんじゃないかと思う。本当にそうなら、自分がラスプーチンであることを早く思い出して、フルパワーを呼び起こして人類を救ってほしい」

こんなことを言われたら誰だって縮こまる。ザヴァラの前で言われたら特にだ。あいつは既に俺のことをエングラム集めなどして人生を無駄にしてる奴だと思っているからな。ザヴァラはそういう奴だ。アンダルにこう言われたら、俺はこう返答する。「アンダル、いいところを突いているかもしれないぞ。だが、正直言うと、太陽系全土で俺達の防衛法をコーディネートするのは著しい体力の消耗につながる。だから、防衛についてはお前に任せるよ」

そして俺は、アンダルが最後にかました冗談のオチになった。今、俺は報告書を読み、命令を下し、大きな心配事を常に抱えて生きている。

ある日、イコラに聞いてみた。「もちろん、俺はラスプーチンについて知り尽くしているが、俺達はいったい何を探しているんだ?ラフールが墜落した軍事衛星を欲しがる時、ホルボーンを火星に送ってコンピューターを探させた時、ザヴァラがコスモドロームのフォールンに関して荒々しくなる時、俺達が本当に見つけ出そうとしているのは何なんだ?明日俺が自分の持ち場を離れて船に乗り込み、外に飛び出して勇敢にもラスプーチンを見つけ出したとしたら、何が起こるんだ?」

人類は救われるのか?

イコラは「良い質問だ」と返した。あ、ちょっと待て。イコラの声色を真似て言った方が雰囲気が出る。コホン... 「ケイド、知ってると思うけど、ラスプーチンがいてこその黄金時代。何よりも、ラスプーチンなくしてはあの機密の軍事活動はなかった。ラスプーチンは反物質を動力とした殺戮光線、無数の月、私に匹敵するほどの知力を備えていた。大崩壊を相手に奮闘したこともあるのだから、私達が知らない何かを知っているはず」

俺の返答はこうだ。「そうだが、ラスプーチンは敗北したぞ。人類を救ったのはトラベラーだ」

イコラはこう反論した。「でもトラベラーは沈黙したまま。ラスプーチンは生きている。今この瞬間、ラスプーチンは荒野でネットワークを拡張し、再建と成長を試みている」

ここで俺は毎日言いたいと思っていたことを言った。隠すほどのものじゃない。「じゃぁ、俺が行って見つけてくるよ。ラスプーチンを見つけて、手を貸してくれって言ってくる」

そうして、イコラはいつものあの表情で俺を見た。どういう表情かって?イコラと話してると、全く脳みそを使って返答してくれていないと思える瞬間があるんだ。この時もそんな表情をしながらイコラは続けた。「ケイド、問題はラスプーチンを見つけられないんじゃない。ラスプーチンが見つけてほしいのかほしくないのかが分からないんだ」

タワーでは、いつもこんな風に物事が進む。何でも複雑で、簡単に答えが見つかることがない。

そして、ある考えが俺の頭の中を回った。「ラスプーチンが強力な軍事力を持ちながらも敗北したなら、ラスプーチンはいったい何を学んだんだ?今度はどんな策を立てるつもりだ?塵の宮殿の話を聞くと、サイオンフレイヤーがラスプーチンの頭の中に入り込んだことを聞くと、不思議に思う... ラスプーチンは奴らといったいどんな話をしたんだ?」

俺もただの道具にしかすぎなかった。力の劣る主の意思に縛り付けられた戦争の道具にしか。だが、俺はそれ以上のものになれることを学んだ。